ITコーディネータになってから7年。一応、専門領域はBI(ビジネスインテリジェンス)やデータ分析、データマイニングということにしている。
 独立前に勤めていた会社で、そのような仕事をしていたからということも大きいのだが、それ以上に、これらの領域がITコーディネータとしての仕事に非常にマッチするような気がしているのだ。
 デミングサイクル(PDCAサイクル)は有名だが、名前の通り、計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)というサイクルを回して、業務を改善していくことになる。
“Check”の部分で、データの分析が実施されるわけだが、ここがうまく行かないと、適切な改善活動はできないし、当然、結果も期待できなくなる。
 ところで、GEを始めとして、世界中で多くの企業が導入しているシックスシグマでは、PDCAを発展させた行動プロセスである“MAIC”というものを使っている。これは、
  • Measurement(測定)
  • Analysis(分析)
  • Improvement(改善)
  • Control(改善定着の管理)
の頭文字をとった活動である。
 PDCAと違って、最初に測定と分析が進められる。「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」というのは孫子の兵法だが、現状を知り、分析を行うことによって改善点が見えてきて、その改善も一過性のものではなく、継続的に行うことで組織全体を強くしていくことができるのではないかと思う。
 現代社会では、かなり多くのデータが収集できるようになり、しかも最近では、ハードウェアの高性能・低価格化によって、以前では考えられなかったようなほどのデータが扱えるようになってきている。
 このようなチャンスを中小企業は逃してはならないと思うし、そこに対して、どのようなITを利用していくかというアドバイスをするのは、我々のようなITコーディネータの重要な役割だと思うのだ。
 ハードウェアは安くなり、オープン化の波で、ソフトウェアの利用についても以前ほどの投資をせずとも、工夫によって何とか導入費用を抑えられるような環境が整ってきている。ここで「ITを導入すれば何とかなるんでしょ?」的なことを考えているクライアントに対して、
「いやいや、ITっていうのは使い方が大切です。導入が目的ではないんですよ」
という、当たり前のことをアドバイスし、結果を出すにはどうしたら良いのか、クライアントの視点で考えるというのは、ITコーディネータとしての喜びだと思う。今後も、クライアントに喜ばれつつ、自分にとってもクライアントの成功が嬉しいと思えるように努力していきたい。
 データ分析というのは、データの裏側に隠れている本質を如何に見つけ出すかというのが重要になってくる。我々、ITコーディネータの仕事もそうだろうと思う。個々の案件、それぞれに対して個別に対応していくだけではなく、問題の本質は何なのか?を考えていくことによって、それまでの異分野・異業種での成功事例を活かしていくことができるのだろうし、環境の変化に伴って出てきた新しい問題に対しても適切に対応できるのだ。そのような問題の抽象化能力こそ、コンサルタントに求められるものであろうし、それが無いコンサルタントは今のような変化の激しい時代には、自分の経験に振り回されるだけになっていくのかもしれない。
 ちなみに、自分が大学院生のときの研究は、ニューラルネットワークを使った視覚情報処理についてのものだったのだが、研究していたときや、社会人になったときには、まさか自分の研究が将来の仕事に役に立つなんて思いもしていなかった。
 もちろん、情報科学自体は統計学が基礎となっているし、自分が研究していた分野でも、予測やカテゴライズ、分類といった分野への応用研究はたくさんあったのだが、自分自身は社会人になってからは、むしろそういう仕事から遠ざかっていたので、最初にBIやデータマイニングの仕事をしたときは、とっつき易くて、助かった。たまたま、そういう分野に縁があったのかなぁと思う。

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