さて、昨日の続きです。

 世の中には、アイディアが求められる場面が色々とありますが、大きく2つに分けられるのではないかと思います。
 まずは、与えられた課題を「どのように解決するか」というHowの発想。
 もうひとつが、何を解決したら良いか、課題そのものを作り出すWhatの発想です。
 これまで、日本では(特に日本の学校教育では)、与えられた課題を解く能力が求められることが多かったのではないかと思います。要するに、課題を解決する側から見れば、課題そのものが明確であったわけです。
 更に言えば、その与えられた課題というのも、どこかで見たことがあるような課題であれば、知識の多寡が、その解決に大きく寄与してきたわけで、それが知識偏重型の教育を生んできたという背景にあるのかもしれません。
 一方で、同じように課題を与えられたとしても、これまで見たことも経験したことも無いような課題だった場合、解決策は(少なくとも)自分の頭の中には無いわけですから、そこからが新たな発想の始まりになります。
 まずは、外部に答えを探し出すという人が多いのではないでしょうか?
 例えば、人に訊いたり、様々な情報について調べたりといったことです。
 もちろん、同様の事例等があれば、それは充分、有効な手段です。
 しかし、現在のように世の中の動きが非常に速い時代では、世の中のどこにも答えが存在しないという可能性も多分にありますし、ビジネスという観点から考えた場合、他社の二番煎じになってしまうということにもなります。
 では、どうしたら良いでしょうか?
 そのような場合、異分野などから類似の事例を探し、そこから発想を広げるということが考えられます。そのためには「抽象化」という能力が非常に重要になってきます(これについては、また後日、詳しく整理しておこうと思います)。
 例えば、トヨタのカンバン方式がアメリカのスーパーマーケットからヒントを得たという話は有名です。これは、スーパーマーケットと自動車の生産という、一見、無関係な事柄の本質をうまくつかんで発想を広げたという例です。
 このように、何か課題が与えられた時に、解決策を考えるのがHowの発想です。
 そして、もうひとつのWhatの発想ですが、これを言いかえると、課題そのものを作り出す発想と言えるでしょう。
 例えば、昨日もブログに掲載した図を使って説明すると、図の中の起伏(グラフ)が既に与えられていれば、それに対して最適な値を計算することは(理論的には)可能です。その場合は、上で説明したように「Howの発想」を使えば良いわけです。つまり、「どのようにすれば、その最適な位置に移動できるか」を考えれば良いということです。
改善と改革の違い
 しかし、ここで出ている起伏(グラフ)は、別に固定のものではありません。図では高さしかもたない平面上のグラフですが、ビジネス上のパラメータを増やせば他次元空間で表わされるグラフになります。
 これも、昨日のブログで紹介しましたが、理想的な解は
IFR = 効用 / (コスト + 害)
 という式で表わされます。この式では3つしかパラメータが現れていないように見えますが、実際は、更に多くのパラメータに分解され、複雑な式で表されることになります。
 もちろん、それらのパラメータは、それぞれ重みが違いますし、式を作る人、会社によって、パラメータの数も違ってくるでしょう。
 ビジネスの世界で考えた場合、「何が目的なのか?」、「何を達成したら良いのか」という、課題そのものを考えることになります。
 イノベーション的発想というのは、これら2つの発想(HowとWhat)の組み合わせに他なりません。
 これまでのように与えられた課題に対して「How」を考えるだけではなく、課題そのものの設定「What」を意識することによって、これまでの枠組みに捉われない自由な発想が生まれる土壌を作ることができます。

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