「ChatGPTを初めとする生成AIの最大のメリットは『認知負荷』を下げることだ」と聞いて、みなさんはどんなことを思い浮かべるでしょうか?

ところで、「認知負荷」という言葉自体が、あまり聞き慣れない言葉という人もいると思いますので、ちょっと簡単に解説しておきたいと思います。

世の中には非常に優秀な人もいて、複数の仕事を並行でスイスイとこなしたり、複雑な仕事も軽々と実行してしまう人もいますが、脳の処理能力や記憶容量には人それぞれに限界があります。

認知負荷とは、人が何かを考えたり、検討したり、言葉を組み立てたりするときに頭の中で行われる「考えるの仕事」による負荷のこと。
これが過剰になると、作業が進まなくなったり、アイデアの立案をする余裕がなくなったりします。

実際、私の体験としても、やることが多すぎて、結局何も手つかずに一日が終わってしまうことがあります。これも、認知負荷が高まっているときに起こる状況の一つと言えるでしょう。

生成AIを使うメリットとして、現時点では、おそらく「情報を検索する手間が省ける」とか「仕事が早く終わる」といった、直接的な利便性を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

たしかにそれらも大きな利点ですが、真のメリットは、人間が日々の仕事の中で「考える」ための認知負荷を下げてくれることなのではないかと、最近は感じています。
(AIに限らず、認知負荷を下げる方法については、また別途まとめておきたいと思います)

例えば、これまでなら数時間かかっていた資料のまとめや文章のドラフトが、AIを使うことでわずかな時間で手に入るようになります。

これは単に時間を短縮できるだけでなく、「どの情報を元に考えればいいのか」を明確にしてくれるので、認知負荷が大きく減ります。その分、意思決定や創造的な活動に集中できるのです。

また、多くの情報のサマリを作ってもらい、全体像を俯瞰し、どこがポイントなのかについても把握しやすくすることも可能です。


経営者やコンサルタントの仕事は、日々多くの悩ましい選択や検討の連続です。そこでAIの助けを借りると、何が大切かをシンプルにしてくれるので、本質的な考察に注力できるようになります。

生成AIは「考えることそのものを代行する」のではなく、「考えることに集中できるよう環境を整える」サポート役としてとらえるとわかりやすいでしょう。

これは教育現場でも同じことが言えます。大学の講義や研究指導でも、ChatGPT等を活用することで、基礎情報の入手に要する時間を大きく短縮できます。その分、自分の意見を統合して考えを立てる時間を確保できるようになります。

実際、私も日々の業務で生成AIを普通に使用するようになっています。
自分自身が作る資料を再度AIに読み込ませて、全体像のサマリを作ってもらい、内容に問題はないか、改善点はないかなどについてのフィードバックをもらったりしています。
今までだと、人間相手に壁打ちをしたりしていたことが、手軽に迅速にできるようになり、まさにアイデアパートナーとして役立っています。

そして毎回感じるのは、「もう自分だけで考える時代には戻れないな」ということです。

生成AIは、人を低能にするのではなく、人間が持つ本来の力を最大限に生かせるための、もう一人の自分のような存在となりつつあります。

新しいテクノロジーが出現すると、必ず脅威論が出てきますし、当然、影響を受ける人や仕事もあるわけですが(私自身もかなり大きな影響を受けるのではないかと思っています)、AIのような強力な技術は、人を代替するというのではなく、自身の能力を最大限に発揮するための武器として考えると、今後のAIとの付き合い方のヒントになってくるのではないでしょうか。

私は仕事柄、よく「BPR」という言葉を使うのですが、AIという強力なテクノロジーが出現した今、企業がBPRについて考えるのはもちろんのこと、我々一人ひとりが、「人生のBPR」ということを考えなければならない時代に突入したのかもしれません。

認知負荷

Follow me!