1. はじめに:ITの進化は「ウイルスイヤー」へ

 かつてIT業界では、技術の進化スピードを「ドッグイヤー(犬の1年=人間の7年)」「ラットイヤー(鼠の1年=人間の18年)」と表現してきたことがありました。
(いつの間にか聞かなくなっちゃいましたけど…w)
しかし、2022年11月にChatGPTが公開されて以来、技術の変化はさらに加速し、もはや「ウイルスイヤー」とでも言うべき状況になっているように感じます。
常に変異を続け、新しいタイプのウイルスが出てくることは皆さんも御存知のとおりです。

 奇しくも、生成AIがもたらす変革に加え、Covid-19の影響でリモートワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進み、社会全体は大きく変化しました。
私たちは今、シンギュラリティの入り口に立っているのではないでしょうか。

 こうした状況の中で、我々はITコーディネータとして中小企業をどう支援していくべきかを少し考えてみようと思います。


2. 急激な技術変化に取り残される企業の現状

 生成AIや自動化ツールが次々に登場する一方で、 「どこから手をつけてよいかわからない」 という事業者は依然として多く存在しているように見えます。
特に、地方の中小企業や伝統産業においては、DXの必要性を感じつつも、「時間がない」「専門知識がない」「コストがかかりすぎる」 といった理由から対応が遅れがちなのではないでしょうか。

 また、技術が進化しすぎたために、

「これまでのIT戦略がすぐに陳腐化する」

という新たな問題も発生しています。
たとえば、数年前に導入したシステムが、生成AIを活用すれば不要になってしまうケースもあり、技術革新の波に乗るのが(その決断も含めて)、今まで以上に難しい状況になっています。


3. 強くて大きい企業が生き残るわけではない:恐竜の絶滅に学ぶ

「生き残るのは、最も強い者でも、最も賢い者でもなく、変化に最も適応できる者である。」

 このダーウィンの進化論の言葉は、まさに今の時代に当てはまるのではないでしょうか。

 かつて地球上を支配していた恐竜は、巨大で強靭な肉体を持っていました。しかし、環境が激変したとき、彼らはその変化に適応できずに絶滅してしまいました。
 一方で、哺乳類や小型生物は変化に適応し、生き残り、進化を遂げていったのは皆さんご存知のとおりです。

 これは企業にも当てはまると思います。

「規模が大きく、過去に成功した企業が今後も生き残る」わけではありません。

 環境の変化に適応し、新しい技術を取り入れ、ビジネスモデルを進化させた企業にこそ生き残るチャンスが生まれます。

 我々ITコーディネータの役割は、「企業がこの変化に適応できるよう、実践的なIT活用を提案すること」にあります。


4. ITコーディネータの新たな役割

 このような状況において、ITコーディネータには次のような役割が求められると考えます。

(1) 「シンプルDX」の提案

 DXといえば、クラウド導入や業務システム刷新をイメージしがちですが、今後はより 「シンプルなDX」 が重要になるでしょう。
例えば…

  • 生成AIを活用して、簡単な業務の自動化を実現する
  • 既存のツールをうまく組み合わせ、低コストで業務効率を向上させる
  • 無理に大きなシステムを導入せず、 小さく始めて、成果を確認しながらスケールする

 企業が「手軽に始められるDX」の選択肢を提供することが必要になって来そうです。

(2) IT戦略の「柔軟性」を高める支援

  • 技術の変化が速いため、「長期的に使えるITシステムを構築する」のではなく、短期間で見直せるIT戦略が求められます。
    たとえば、SaaS(クラウドサービス)の導入を基本とし、状況に応じて解約・乗り換えが容易な構成を検討、助言する
  • 企業が「最新技術を取り入れる余地」を持てるようなIT投資の考え方をこれまで以上に伝える

といったことが考えられそうです。ただ、財務状況にゆとりがあまり無い企業に対しては、これまで以上に先を見通す目がITコーディネータに求められそうですね…。

(3) 「技術の翻訳者」としての役割

 ITコーディネータは、技術者というよりも経営者の伴走支援者 という側面が強いと思っています。

  • 生成AIやDXのトレンドを「中小企業向けの言葉」で説明し、
  • 「この技術を入れると売上やコスト削減にどうつながるのか?」を明確にする。
  • 事業者の視点に立ち、無理なくITを活用できる方法を提案する。

といった、従来からITコーディネータの役割とされていた事柄が、これまで以上に明確になってきていると思います。
そもそも、我々自身が最新のトレンドについていくのがかなり大変になってきているので(そんなことないというITCもたくさんいると思いますがw)、専門家、支援者として責任は重大になってきています。


5. まとめ:ウイルスイヤーの時代に適応する

 生成AIやDXの進化により、ITの変化速度はこれまで以上に加速しています。
この「ウイルスイヤー」の時代において、企業が適応するためには、ITを「重く構える」のではなく、「柔軟に活用する」姿勢が必須になっていると思います。

 かつての恐竜のように「強くて大きい」だけでは生き残れません。
 環境の変化を見極め、素早く適応した企業がこれからの時代を生き抜いていくのです。

 ITコーディネータとして、

  • シンプルDXを提案する
  • IT戦略の柔軟性を高める
  • 技術の翻訳者として経営者を支援する

というITCとしての基本的な姿勢を再確認することで、これからも企業が現在の変化に適応できるようサポートしていきたいと考えています。

シンギュラリティ

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